Novel



部屋とダンボールと僕
Kodii
 僕は今部屋を片づけている。というのもいいかげんこの部屋にも飽きて、なんだか腐れ縁の友人が隣で寝転び煙草をふかしているような感覚がしてきていたからだ。この部屋がもっと新鮮で快適だったらもっと楽しい人生が送れるかもしれない。そう思い、部屋の模様変えを思い立った。
 近くのコンビニからダンボールをもらって、とりあえずとっておくものをその中にいれ、いらないものをゴミ袋に入れることにした。そして雑誌など、要らないものをどんどん捨てた。要らないものが目の前から消えてゆくのは清々しい。なんだか自分が研ぎ澄まされてゆく気がする。そして最後には気に入ったものに囲まれ、この部屋自身が僕になるだろう。そしてそのときには何事にも煩わされることなく、僕は喜びをもって人生を謳歌するのだ。
 僕は焦る気持ちを抑え、冷静に分別してゆく。よれよれのパンツ、破れたスリッパ、鳴らない目覚し時計などを捨てた。意外と探せばあるものだ。そして、小学校のアルバム、高校のときのスナップ写真、昔よく聞いていたCD、お気に入りの本、日記など、今は必要ないが捨てられない思い出をダンボールに詰め込んだ。そして全て分け終えるとダンボールは押し入れの奥にしまい、ゴミ袋はまだ出せないので玄関の外に置いた。部屋の中はずいぶんと片づいた。思い描いた通りのシンプルな部屋になった。満足して、キャメルで一服。窓からは紅く染まった細長い雲が見える。
 僕は最近、時間においても、空間においても今の自分に近いものを大切にしようと心がけている。だから部屋には今必要なもの、今好きなものだけを置くことによって、今をつまりは人生を意識して過ごすことができる。昔好きだったが今は別にというものは全てダンボールに入れた。
 この部屋はこの先常に変わり続けてゆくだろう。僕が変わるように。それが本来の部屋のあり方なのではないか。部屋が変化しないのはその人の変化を遅らせることとなり、その部屋が変化してゆくためには意識して今の自分に合わせる必要があり、妥協して過去の自分をも混ぜると変化は女のトイレよりも遅いものになってしまう。変化または進化してゆくためには、慣れ親しんだ場所にとどまってはいけないと心に決めた。そして僕は空間や時間において点になろう。瞬間に賭ける人生は美しい。
 しかしそのとき部屋のダンボールに目がいった。なぜあそこにあるのか。あれこそ過去そのものではないか。僕は口だけで、知らずに過去にすがっていたのか。今すぐ捨てなければならないが、そのことは物としての思い出がこの世から消えることを意味している。つまり自分をこの世に残せないということだ。点になることはこうも難しいことなのか。僕はダンボールを前に考え続けた。外はいつの間にか暗くなり、寒くなってきた。窓ガラスに映った僕は青白くげっそりとしていた。このままじゃいけない。僕は玄関のドアを開け、ダンボールを抱えて、ゴミ捨て場まで運び、捨てた。これで終わりだ。僕はたばこに火をつけ、一歩一歩と力強く歩いた。風が冷たくて気持ち良かった。